【短編】大好きだった
出会いは高校1年の春。
クラスが同じで、
私より一つ前の席にいる人。
それだけだった。
彼とは特に話すことはなかったし、彼がこちらを振り返るのもプリントが配られた時くらいだった。
クラスメート全体のなかの一人という存在でしかなかった。
そんな彼に、いつしか特別な感情を抱くようになっていた。
落ち着いた雰囲気で、中学上がりのクラスメイトよりも大人びた彼に惹かれたのかもしれない。
後ろからその広い背中を眺めていて、“男”として意識したのかもしれない。
とにかく、高校生になって初めての席替えが行われた時には、既に彼を意識していたと思う。
でも、だからといって、
まさかこんなにも彼を好きになるなんて、
その頃の私は考えもしていなかったけれど。