【短編】大好きだった
私はいつも不安だった。
物静かであまり話さない彼。
話しているのはいつも私だった。
愛を囁かれたこともなかった。
「好き」はいつも私で。
その後に返してくれる優しい口付けに喜びを感じていた私も、いつしか不安ばかりが積もるようになった。
告白も私からだった。
「好き」と呟いた私に「うん」と頷いて、
「付き合って」と頬を赤らめた私に、これまた「うん」と頷いて歯を見せて笑った。
一度も彼からの言葉を聞いたことがない。
それが私を不安にさせた。
「私のこと好き?」
と尋ねたって彼は笑うだけで…。
いつしか不安は不満へと変わっていた。