【短編】大好きだった

私はいつも不安だった。


物静かであまり話さない彼。
話しているのはいつも私だった。



愛を囁かれたこともなかった。




「好き」はいつも私で。
その後に返してくれる優しい口付けに喜びを感じていた私も、いつしか不安ばかりが積もるようになった。



告白も私からだった。

「好き」と呟いた私に「うん」と頷いて、
「付き合って」と頬を赤らめた私に、これまた「うん」と頷いて歯を見せて笑った。




一度も彼からの言葉を聞いたことがない。




それが私を不安にさせた。


「私のこと好き?」
と尋ねたって彼は笑うだけで…。


いつしか不安は不満へと変わっていた。



< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop