【短編】大好きだった

付き合い始めて1年が経つと、喧嘩が増えた。

と言っても、私が一方的に怒って彼が呆れる、というものだったけれど。



それから受験がいよいよ近付いて、一緒に帰れる日もめっきり減った。


彼は難関大学を目指していて、毎日予備校に通っていた。

私はというと専門学校への入学が既に決まっていて、予備校に向かう彼の背中を教室から眺めるしかできなかった。




その頃から彼が女の子と一緒に帰っているところを見かけだした。


私が怒ると、彼は「ついでだから予備校に一緒に行ってるんだよ」と呆れたように返した。




納得がいかない様子を見せると「信じてないの?」と怒った。



違うよ。不安なんだよ。

その二言が言えなかった。



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