【短編】大好きだった
あの女の子が彼に告白したらしい、と友人から聞いた。
不安だった。
最近は喧嘩ばかりで、彼も私にうんざりしているんじゃないかって。
「あの子と付き合うの?」
そう言えば彼は眉間に皺を寄せた。
「何で?」
「私のこと嫌いになった?」
彼は大きなため息をつくだけで、私の言葉には何も返さなかった。
不安になって涙を流すと彼は一歩私に近付いて、大きな指でそれを拭った。
彼の体温が指から伝わって、私はまた泣いた。
「泣くなって」
今度はしっかりと私を抱きしめてくれた。
腕の力強さと私を包む温かさに、不安が溶けた気がして、嗚咽が漏れた。
私は彼の背中に腕を絡めた。
彼との隙間がなくなるように、しっかりと。