【短編】大好きだった
春、彼が難関大学に合格すると、長い長い受験が終わった。
春休みは彼とたくさん遊んだ。
以前のような優しい時間が戻って、本当に幸せだった。
だけど憧れていた新生活が始まると、彼と過ごす時間は次第に減っていった。
彼の通う大学は彼の家から2時間かかる所にあって、毎日早くに家を出て遅くに帰ってくる彼と会える時間はほとんどなかった。
今までは毎日学校で会えていたのに、週に1回会えれば良い方で、心の片隅で眠っていた不安がまたくすぶり始めた。
電話で大学での出来事を楽しそうに話す彼に、私は素直に笑うことができなかった。
私の知らない彼が増えていくようで、怖かった。
彼の周りに彼のことを好きな女の子が居て、とられちゃうんじゃないかって、よく考えた。