生きた証 SILENT VOICE
髪を耳に掛ける時しか気にもしなかったが

彼女はこの暑い時期に何故か長袖を着ている

『私は何度も自分を傷付けたわ。そうしなきゃ生きてる実感が涌かないの』

右腕を握り締めている彼女の表情は

色んな感情のせいで歪んでいた

俺は帰る事も忘れ

自分の席に座って彼女に耳を傾けていた

『自分はなんでこんな事になったんだろうって、自問自答ばかり繰り返して・・・』

泣き出しそうな声で話し続ける

俺は彼女の吐き出す限り聞いた

今までの事

虐めの事

恋の事

『楽になった?』

涙をいっぱいに溜めて頷く表情は

とても愛おしく感じさせた

本当に苦しかったのだろう

『でも、何で俺なんかに話してくれたんだ?』

一呼吸置いてから

『見ちゃったの』

『?』

『私、屋上に居た』
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