生きた証 SILENT VOICE
下駄箱まで来ると

『はい』

彼女は一枚のメモ用紙を差し出していた

見るとそこには

メールアドレスと名前が書き込まれていた

『何かあったら連絡する事!約束だよ。じゃあね』

駆けていく彼女の背中を

見えなくなるまで見ていた

辺りはまだ微妙な明るさを保っていた

出発間近の電車に勢いよく飛び込んだ

まだ7時過ぎだというのに

妙に人は少なかった

静かな車内

今日の事をゆっくりと

鮮明に残っているうちに思い出す

半年ぶりに出て来て初日なのに

一気に疲れが溜まった

ポケットからあのメモを取り出す

すると

一緒にキラキラする宝石が出て

床に落ちてしまった

拾おうとして手を伸ばすと

目の前を誰かに遮られ

奥の方に転がってしまった

席を立ち上がって取りに行く

すると小さな男の子がそれを先に拾った

『お姉ちゃんの!』

え?
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