生きた証 SILENT VOICE
彼女は何故喋らないのだろう?

そこが凄く気になって仕方なかった

だけど

触れない方がいい気がした

それは自分でもよく分からない

『?』

変な風に見られただろうか

沈黙が妙に長くなってしまった

何処かに焦点を定める訳でもなく

ぼーっとしていた

『あっ、ゴメン。ちょっと考え事してた』

彼女はニコッと笑った

笑窪がとても可愛い笑顔

吸い込まれそうな瞳

俺は背中に汗をかいていた

『俺の顔面白いかな?』

彼女は勢いよく首を横に振った

そしてまたニコッと笑った

メモを取り出してまた何かを書こうとしている

俺はチャンスと思い

勝負に出る事にした

『いいよ、口の動き読むから』

彼女はハッとしたらしい

二重の目がくっきりと開いて

シャーペンの手が固まっている

彼女はゆっくりと口を動かす


わたし

こえを

なくしたの


『声を無くした?』
< 18 / 23 >

この作品をシェア

pagetop