生きた証 SILENT VOICE
さっきまでの表情とは一変して

悲しげな顔を見せる彼女

俺は胸が締め付けられる思いがした

全くと言っていい程関わりが無かったのに

今はこんなに話せてる

だからこそかもしれない

彼女の気持ちをわかろうとする自分が

ここにいる

俺は目で彼女の音の無い言葉を読む


しせいしょう


『しせいしょう?』

首は横に振られた

「し」の後の息の量・・・

『失声症?』

今度は縦に振る

口の動きを読むなんて生意気な事を言ってしまったと

少し後悔した

こんな難しいなんて思っていなかった

小さな「つ」も直ぐに分からないんじゃ

彼女は俺の気持ちに気付いているらしい

首を横に振った後


だいじょうぶ


そう口は動かされた

いつの間にか背中の汗はひいていた

彼女が鞄から一冊の本を取り出した
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