生きた証 SILENT VOICE
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り

教室から生徒が出ていく

俺もさっさと鞄の用意を済まして

帰ろうとしていた

琴美はまた携帯を構っている

『誰とメール?』

何の気無しに聞いていた


ともだち

だよ


『そっか。じゃあ俺行くね』

彼女は精一杯の笑顔で俺を見送ってくれた

駅までの道

この静かな時間が好きだった

車の通りも少なく

工事でも無い限りは大きな音もしない

だけど

今日は後ろから大きな声が聞こえる

『待ちなさいよ!』

未苟が走って来た

『なんで待たなきゃいけないんだよ?』

相当走ったのだろう

肩で息をしている

『委員会が終わってから、一緒に帰ろうと思って教室行ったけどいないし』

『昨日は一緒に帰るなんて言ってもなかったくせに』

彼女の気持ちは何となくわかっていたが

からかってやろうと思って

わざと冷たくした
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