生きた証 SILENT VOICE
『昨日は友達と帰ったの!』

膨れっ面でじっと俺を見ている

『疲れたからおぶって』

わがままにも程がある

だけど

走って疲れているはずなのに

表情には笑顔が溢れていた

彼女の強さを垣間見たような気がした

『歩け』

『やだ』

『じゃあ走れ』

『馬鹿!』

俺はいつもより大股で歩いた

後ろを振り向くと彼女は

一生懸命付いて来ようとしている

彼女の歩幅はとても小さい

何度も振り返っては手招きした

そうすると彼女は大きな声で

『馬鹿!』

と叫ぶ

そんなやり取りがとても暖かく感じさせた

駅に着いた時には彼女が俺の制服の裾を掴んで

全く離そうとしない

『離せって』

『だって離したら悠逃げるもん』

鞄からスポーツタオルを出して

彼女の額を拭いてあげた

『あ、ありがと』

少しだけどドキドキした自分がいた
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