生きた証 SILENT VOICE
呼吸を整えてトイレの鏡を見た

鳩が鉄砲玉喰らったより酷い自分の顔が写って

思わず吹き出した

大丈夫

まだ笑えてる

自分に言い聞かせるようにトイレを出た

廊下の水道で顔を洗うと

排水溝の所にキラキラ光っている物を見つけた

手に取ってみると

それは一つ宝石があしらってある

俺にはそれが何の宝石か

誰の物であるかなんて

分かるはずもなかったけど

ポケットにしまい込んだ

教室に荷物を取りに行くと

窓際に誰か立っていた

気付かれないように荷物を取ったと思ったが

気配はばれていたらしい

振り向いた女の子の顔は

逆光でよく見えない

『複雑な事情があるみたいね』

肩まで無いショートカットの髪が

窓から入ってくる風で

カーテンと一緒に靡いている

彼女は一方的に話し始めた
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