狐に嫁入り!?
――――・・・・・・
朝、私はいつもより早く目が覚めた。
……というよりほとんど眠れなかった。
浅い眠りを何度も繰り返し、時計がやっといつもの1時間前を差したので起きることにした。
布団から出ると紺色の旅行カバンが目に入った。
それは昨日、あやかしの世界へ持っていくための洋服や下着を用意したものだった。
カバンだけを見ればちちょっとした旅行にでも出ていくようだけど、昨日から準備していた心が妙に速くて、旅行なんかじゃないと叫んでるみたい。
「わかってるよ……」
旅行じゃなくて、人間界から離れるんだって。
私が人間でいるのは今日で最後なんだって。
軽く胸を叩いて、叫ぶ心臓に返事をした。