狐に嫁入り!?
いつもの参拝の時間に来い、とウタクには言われていたけど早めに家を出発した。
このままウジウジと家にいると勢いがなくなって決心が鈍ると思った。
空は憎らしいほどの快晴で、あやかしの世界に太陽はあるのかな?なんて思ってしまう。
神社へ近付くほど私の歩みは遅くなっていった。
カバンが妙に重く感じる……。
「ウタク!約束通り……来たよ!?」
『ふん、お前は時計も見えないのか?』
ウタクの小さな声が頭の中に聞こえて、風が強く吹いた。
木々がざわめき、竜巻が起こりそうなほどの風。
よろけて座り込んでしまいそうになった時、肩に冷たいものが触れた。
「……ウタク!」
「そんなに早く嫁に来たいか?」
ニヤリと笑うウタクの手を振り払って私は素早く距離をとった。