狐に嫁入り!?
「ついてこい」
歩き始めたウタクは振り返ることなく私を呼ぶ。
私は戸惑いながらも逆らうことなく付いて行く。
この世界では私の方が明らかに分が悪い。
ウタクと離れたら右も左もわからなくなってしまう。
「あぁ……言い忘れたが、そこの森へは入るな」
「森?」
集落の入り口らしき木造の門の前でウタクは立ち止まってこちらを振り返った。
つられて私も後ろを向くと、うっそうと生い茂った森が目に飛び込んできた。
さっきは気付かなかったが、微かに緑の匂いもする。
「あの森には妖狐が住んでいる。お前が迷いこめばすぐに取って食われるぞ」
「わかった……絶対近づかない」
私はゴクリとつばを飲み込みながら返事をした。