狐に嫁入り!?
「……願っているからこそ…………」
……認められない。
最後まで口には出さなかったけど、拳を握りしめて微かに肩を震わせる皐月さんから、そう言われた気がした。
皐月さんの態度を見たヤマジは呆れたように息を吐いた。
「狐の家来はまだまだ若造のようですね」
「耄碌(もうろく)狸、ここを去りなさい。さもなくば警報を鳴らして全善狐を呼びますよ」
「気が短いのも若い証拠。言われなくとも帰ります。坊ちゃまも心配ですし」
苛立った皐月さんがヤマジを睨みつけて威圧したけど、ヤマジは全く気にしてない様子。
慌てることなく、ナライと同じように風を集めて帰る体勢を整え始めた。
「それではウタク様、最後に一言」
「なんだ?」
「早く婚姻の儀を行ってください……そして実雨様の願いを叶えてあげてください。
実雨様の幸せを願った坊ちゃまのためにも……」
ヤマジは言い終えると、一礼して飛び立った。