狐に嫁入り!?
白い着物は至る所から流れる鮮血に赤く染まり、力なく項垂れるウタク。
激しく上下する胸が呼吸の荒さを物語っている。
「皐月さん!ウタクが……!」
「そんなこと……承知の上です!」
言い放った皐月さんはキツク唇を噛み締めていた。
本当はすぐ駆け出してウタクを助けたいはずなのに。
私を人間界へ帰そうとしてる……。
「私、もうここで住むから……!人間界になんて帰らなくていいから!ウタクを助けて!」
私が足を止めて抵抗すると、皐月さんが私の腰を持ち上げて肩に抱えた。
どこにそんな力があるの?と、思うような細い体つきなのに、軽々と、しかも先ほどと変わらぬ速度で歩きだした。
「誰が貴方の命令など聞くものですか。私はウタク様のためだけに動いているのです」
「それなら尚更……っ!」
後ろ向きで、逆に流れていく景色。
遠ざかるウタクを見詰めながら、足を止めて欲しくて皐月さんの肩を叩いていると……
「……なに、あれ!?」
ウタクが黒い布のようなものに覆われ始めた。