狐に嫁入り!?
そして皐月さんはまた私を抱える。
「ウタク……!」
布に包まれて、ますます見えなくなるウタクへ向かって叫んだけど、届いているのかどうかもわからない。
「あ……あれが……」
布にすっぽり包まれたウタクの近くに現れた影。
頭の頂上付近で一つにまとめているというのに、太もも辺りまで伸びた漆黒の髪を振り乱し、髪の色と同じく闇を現したかのように黒い着物からは九尾が見える。
耳は人の耳と、髪をまとめたあたりに黄金色した猫ともライオンの耳ともいえる耳が見える。
「大神様……?」
大神様らしき男は、皐月さんに連れられるがまま、呆然と去りゆく私の方へ振り向いた。
緋色の瞳が私を捉える。
射抜かれそうな強い威圧感を感じて、逸らしたくてもそれさえできないほど。
口元からは今にも噛みつかれそうなほど鋭い犬歯が見えている。