狐に嫁入り!?
私達二人を包み込んでいた風が吹き止み、地に足が着く。
ナライは力強く手を差し出してくれたはずなのに、あやかしの世界へ到着した頃には顔を赤らめていて、私からすぐに手を引いた。
やっぱり女の子には慣れていないみたい。
ウタクのことで頭がいっぱいだったけど、ナライの様子に少しだけ和んでしまった。
綻んだ口元を引き締め直すと、私は辺りを見渡した。
目の前に広がっているのは、木の塀で囲われた街。
「ここが……?」
「そっ!俺の領地!」
ナライは自慢げに鼻をこすった。
狸の精霊達が暮らしている集落らしい。
木造でわらぶき屋根の家々。
整備がされていないグラウンドのような道路。
どこからか漂うご飯のいい匂い。
……こんなことを言うと、ウタクもナライも怒ると思うけど……狐の精霊達がいる集落と似ている。