狐に嫁入り!?




「実雨……!」




本殿内に響く凛とした声。


ずっと……聞きたくて、探してきた声。



「……ウタク……!?」


「馬鹿が……なんで来た」


「ウタクを助けに来たのに決まってるじゃない!」


「ほぉ……いじめられに、の間違いだろう」



ウタクの姿は見えなくて、耳に届いた声は苦しそうでもあり、少しだけ嬉しそうでもあった。

意地悪なところも健在で、ちょっとだけ安心したのに……


「だが、生憎期待には答えられそうもない。帰れ」

「そんな!」



帰れと言った後すぐ、ウタクは喉を詰まらせてむせた。


いじめて欲しいなんて、もちろん期待してない。

でもこんなに弱ってるウタク……ウタクじゃないよ!
< 406 / 515 >

この作品をシェア

pagetop