狐に嫁入り!?
大きな音と共に背中から走る激痛。
「実雨……!馬鹿が!」
ウタクの声が近くに聞こえる。
私は自分が座り込んでいた場所から思い切り飛ばされたようで、
遠いと思っていたウタクのいる部屋まで飛ばされていた。
背中の痛みは格子にぶつけたものらしい。
「帰れと言っただろう」
ウタクは鬱陶しげに言い、血だらけの体で這いずりながら、私の側まで寄って来てくれる。
さっきより弱ったように見えるのは、きっとまた私を助けるために術を使ったから。
「ウタク……ごめ……ありがと……」
「礼を言う暇があるなら、帰れ」
「だってウタクが……」
朱色に塗り上げられた木の格子の間から、私はそっと手を伸ばして、近くにあったウタクの指に触れた。
冷たくて、血の気が無くて。
でも確かにウタクの手。
少し触れただけで、こんな状況でもひどく安心した。