狐に嫁入り!?


目をつぶって、音が溢れる本殿内から小さな声を探す。


「ね?聞こえるでしょ?」


私はナライの顔を覗きこんで聞いた。


「ダメだ!全っ然聞こえねぇ!」

「え、そうなの?」


じゃぁ私だけが聞こえるの?

空耳かな?


と、思っていたけど。



「狸は頭も耳も悪いんですね」


私とナライの後ろにいた皐月さんが呆れたように言い、ナライはカッとなって振り返る。


「なっ!皐月は聞こえたのかよ」

「もちろんです」

「え!嘘!?」

「これは鳴釜神事(なるかましんじ)です」

「……鳴釜神事?」


言われた意味がわからず、ただ顔をしかめながらオウム返しをするしかできない。


そんな私を見て、皐月さんはため息をつき、静かに言葉を続けた。
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