狐に嫁入り!?


もしかしたら何もかもお見通しなのかもしれない。


「一度きりの人生だから、毎日を悔いのないように過ごすのが一番。

長い間、ベッドで過ごしてわかったの」


母は入院生活を思い返しながら苦そうな顔をし、それから何かに気付くと、パッと明るい表情に変えた。


「でも入院したこと、後悔してないわ。露木さんに会えたから」


細い腕で私から荷物を取ると、力強く歩き出した。


その先には、車に乗った露木さんがいた。



「実雨とウタクさんも乗って行く?」


私達を振り返った母は、病院のライトではなく、さんさんと降り注ぐ太陽でとても輝いている。


私は眩しさに目を細めながら、首を振った。


「私達はここでいい」

「そう。たまには……帰ってきなさいよ?」

「うん、もちろん!」


頷く私を見て、母は納得したようにまた歩き出した。

< 505 / 515 >

この作品をシェア

pagetop