狐に嫁入り!?
もしかしたら何もかもお見通しなのかもしれない。
「一度きりの人生だから、毎日を悔いのないように過ごすのが一番。
長い間、ベッドで過ごしてわかったの」
母は入院生活を思い返しながら苦そうな顔をし、それから何かに気付くと、パッと明るい表情に変えた。
「でも入院したこと、後悔してないわ。露木さんに会えたから」
細い腕で私から荷物を取ると、力強く歩き出した。
その先には、車に乗った露木さんがいた。
「実雨とウタクさんも乗って行く?」
私達を振り返った母は、病院のライトではなく、さんさんと降り注ぐ太陽でとても輝いている。
私は眩しさに目を細めながら、首を振った。
「私達はここでいい」
「そう。たまには……帰ってきなさいよ?」
「うん、もちろん!」
頷く私を見て、母は納得したようにまた歩き出した。