狐に嫁入り!?


小さくなる背中は、今まで見てきた母の、どの背中より温かくて丸くて大きくて……


もう会えなくなるわけじゃないのに、


私は気が付いたら駆け出して抱きついていた。



「っ……実雨!」


「お母さん……幸せになってね」


「……実雨も、ね?」



親子そろってめでたい日に、泣いてばかりじゃいられない。


私も母も、顔を隠したままだったけど、きっとお互い嬉し涙でいっぱいだったと思う。


状況を察知したのか、通行人の祝福の拍手に紛れて、車から出てきた露木さんの「おめでとう」という声も聞こえた。



照れと羞恥で熱くなる顔を笑みで飾り、私はウタクの腕の中へ戻った。



千日目の朝見た夢はウタクの仕業?

それなら夢の続きはここにあるよね。


もう何があっても……ここから離れないよ。
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