狐に嫁入り!?
ウタクはそんなことを言いつつも、私の顎に手を当て、ゆっくりと持ち上げた。
「何もしないんじゃなかったの?」
精一杯の虚勢を張ってみたけど、ウタクには効果なし。
「何も、とは言ってない」
「でも……言ってることとやってることが違う気がする」
「これは力を補給するんだ」
「力を補給?」
聞いている間にも近づくウタクの顔。
既にもう、お互いの息がかかるほど。
「ふん、人間界とあやかしの世界を往復したり、耳を隠したり、尻尾をしまったり……
誰かさんのために随分と力を使ったからな」
「……ごめんなさい」
「謝罪より感謝の方が幾分いいな」
……ありがとうって、言おうとしたのに。