狐に嫁入り!?


しばらく何もしないまま母の顔を見つめていると、担当の先生がやってきた。



「実雨ちゃん、今いいかな?」

「……はい」


看護師さんから手術のことを聞いていたので、先生が言おうとしていることがわかる。


私が少し身構えたように表情を固くすると、先生は申し訳なさそうに顔を歪めた。



「実雨ちゃんに相談するのはおかしいかもしれないけれど……」

「いえ……私しかいないので……」


父はいないし、親戚も借金のことでお金の工面をしてもらったりで疎遠になった。

お金が絡むと人間関係は複雑になる。

母に近しい者は私しかいない。


「じゃぁ……話すね」


先生の口調は柔らかかった。

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