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『千夏~、今年どうするよ。どこ行くよ。』
扇風機が一台。
全ての窓は全開にされているが、それでもこのじめった空気は消えてやくれない。
パタパタとうちわを扇ぎながら項垂れる彼女を見ていると
高校の頃に習った物理の授業を思い出した。
『幸枝。』
『ん~?』
『うちわで扇ぐのはいいんだけどさ。
そんときにあんたが動かすために発生する熱の被害って
あたしに被るんだってこと、』
……を、誰かがいっていたような。
『はあ?』
『わかんない。あたし物理わかんないし。』
ほぼ顔も出さないこのサークルに、あたしは何人在籍しているのかなんて知らない。
だけどこの部屋にはあたしと幸枝しかいなくって。「旅行サークル」と、名はあるものの
実際のところは、ただの飲みサーに他ならない。
だから去年だって、結局夏に旅行したメンバーはあたしも含め、幸枝とタカヒロと、田中くんだったか中田くんだったか。
もはやダブルデートのようなものとなっていた。