楽々荘の住人十色
浅い眠りから覚めると昼だった。
寮の中は空っぽで、昼間の日差しが薄っぺらい遮光カーテンから射していた。
簡単に着込んだ服装で午後からの退屈な座学授業に出る。

おおあくびをしながら、80円の熱くて濁ったコーヒーを飲む。

「おはよ、廉。」

少人数のクラスは大半、みんなが声をかけてくれる。
服飾科は男もその分いないから楽だ。

NYコレクションの映像を見ながらの解説は教授自身も自己満足授業だと主張するほどダラけてる。

それに、服飾なんて趣味でしてる段階が一番幸せで奥に進めば進む程、道は狭い。
この教室にいる全員の中でデザイナーになれるのは0か1の確率。
寂しい業界だ。


< 12 / 80 >

この作品をシェア

pagetop