楽々荘の住人十色
「ドローイング(線画)が終わったら、降りるよ」

有馬の手は木炭で真っ黒に染まっていた。


リビングに戻ると煮えたぎる鍋に肉を投入する三上さんと、いつまでもうなだれてる実春。

「実春、いつまでそーしてんだよ」

実春の脇腹に蹴りを入れる。

「教授から頂いた参考文献が全く読めないんだって」

古そうな本は半開きで、ぎっしりと詰まった古文書(歴史ある記録書)とレポート用紙に書かれた汚い文字。

片わらじゃあ鍋はどんどん、うま味を引き出して部屋を暖め空腹に呼びかける。
人数分の器を並べる。

「早阪、もう一つ器が足らないよ」

「ただいまー!!」

聞き覚えが有りすぎる声。
アイツだ。


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