楽々荘の住人十色
窓は外気温を現し、スモッグガラスの様に部屋の中をぼかし湿気と一緒に流れる水滴も垂れては跡を残し、また曇る。

胸ポケットから、くしゃくしゃになったソフトタイプのタバコに火をつける。
薄着で出てきてしまい、直ぐに足先と手がかじかむ。

見上げれば、雲も星もない真っ黒な夜。
だからまた、詩音と一緒に帰る冷え込んだ夜と朝の間を思い出す。

家族みたいな寮の仲間に心配や世話かけてくれる大人達。
人の温かさに触れて囲まれて過ごしていても、私はやっぱり詩音と一緒じゃなきゃ孤独で一人だ。

だって、秘密を抱えて生きる事程孤独が多くて息苦しいから。
愛して恋したのが、たまたま女ってだけなのに。


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