楽々荘の住人十色
タバコを吸うペースがどんどん早くなる。

背を向けて閉めたはずの窓が開いた。

「上着着なくて寒くないのか?」

寮の共有スペースは全て禁煙。
喫煙者は私と、その天敵。

吸いかけのタバコを無理からに消して、部屋に戻ろうとすると珍しく真面目な顔をした松本さんが腕を掴んだ。

「待てよ、頼むから。大事な話がしたいんだ」

男に気安く触れるのは得意じゃない。

「ちゃんと聞くんで、離して下さい」

松本さんがくわえたタバコにライターを差し出す。
背が高く男にしては長い髪をかき上げ、火にタバコを付ける。


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