楽々荘の住人十色

そんな先生が忙しくなれば当然、今の准教授から客員教授に代わるか辞めるかの答は1つしかない。

｢辞めるんですか？学校｣

深く吸って肺に入った煙はグルグル回って白い吐息と混ざり合う。

｢いずれはな…なぁ廉、お前もパリに来ないか｣

松本さんは、くわえたまだ長いタバコを無理からに消した。
まるで、ドラマの最終回に口ずさむプロポーズの台詞を吐き捨てて。

｢大学を辞めて着いて来いとは言わない。ただ、廉の才能を見込んでの話だから｣

ふざけんな。
アタシに才能なんてない。
創ること想像することが好きだから、誰の為でもない自分の為にやってんだ。