楽々荘の住人十色
「この切れ端、捨てんの?」

そう言って、実春は無駄にブラウスの制作で出来た切れ端を並べ始めた。

「欲しかったら、やるよ。もう使いみちないから。」

草木染め、藍染めを繰り返し染められ顔料をふくんだ布はこの世に一枚しかない。

「うん、綺麗だ。」

実春は私の作品を見て何故か喜んだり、嬉しそうにする。
そうして、また掃除をする。

「廉は、才能あるんだしもっと積極的に制作したほうが良いよ」

どいつも、こいつも、ミンナ似たような事を簡単に口走る。

もう私は好きだから、する。
とか言うラインを越えてしまったのかもしれない。


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