楽々荘の住人十色
「あと、2時間は帰れないよ。どーする?」

「待ってるよ」

事務所や店の店員もどうやら私達の関係に気付いてるらしい。
事務所の小さい窓から見えるネオン街を眺めながら、詩音が男を抱き終わるのを待つ。
それが日課だ。

朝に近い夜は車も人もいなくて、何だか変な世界。
詩音と二人で歩く夜道はこの世が女しかいない世界のようにも感じる。

手を握り、柔らかくゴツゴツした感触のない指を確かめる。

「最近、よく迎えに来てくれるけど学校は大丈夫なの?」

詩音の部屋で一人待ちぼうける程、辛くて苦しい事はない。

まるで、詩音の部屋の中でしか私達の世界がないみたいだから。


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