楽々荘の住人十色
長い髪をかきあげ、くるりと回転し私に笑顔を振りまく詩音がとても愛おしい。

「ありがとう、廉」

そして悲しい。

「似合うね、良かった」

はじめから解ってた。
結ばれないのは。
愛し恋するのは自由だけれども叶わない。

「ねぇ、詩音。私達、別れよう」

詩音はもうすぐ、今の彼と結婚する。

あの日に全部、溜め込んだ水分を出してしまったのか涙は出なかった。

「何か、ここまでされちゃうとホント…どーしたらいいか…」

詩音は泣きながら、優しく私を抱きしめてくれた。

一緒に居ちゃいけない訳も理由もない。
だって、私は今でも詩音を愛してるから。


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