楽々荘の住人十色
どうして、仏教を学んでないのに盆に駆り出されているか。

うちは男所帯で、母さんは僕が15歳の時に病気で死別した。

父さんは、歳のわりに落ち着きがなく遊びと仕事を両立する言わば生臭坊主だ。
住職だけど。

そんな父のお陰で俺も毎年合うたびに俺の背丈より大きくなる弟達も全くと言っていい程、寺を継ぐ気がない。

「ただいま~…親父ー?居るの?」

本堂には相変わらずの不気味に煤汚れた仏像とお札。

「あ、兄貴。おかえり。」

迎えてくれたのは、背丈ばかり伸びてひょろっとした海波(みなみ)


< 34 / 80 >

この作品をシェア

pagetop