楽々荘の住人十色
お茶なら私が…と言う台詞を聞き流し、ぎこちな笑顔を見せ付けて。

ポットに入ってる湯を使わずに、わざわざヤカンで湯を沸かした。
呆然と眺める古びたコンロの種火。

「お茶はまだですか?」

見透かし見下した海波の言葉で我にかえる。
ただお湯を沸かしてるだけの状態にため息をついた海波は、素早く準備をする。
お盆の時、毎年お茶出しをしている海波の手捌きは慣れたもので、いつも同じで平然としていた。

「兄貴は俺より母さんの事、知ってるから動揺してんの?」


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