楽々荘の住人十色
「学校は…たぶん大丈夫」

ここのところ大学には行ってない。
大学の所有する楽々荘とバイトと詩音の家をグルグル回るローテーション。

「留年したら、一緒に風俗嬢でもする?」

冬の夜は長い。
夜の暗さが一段と吐く息を白く際立てる。

「やだよ、男なんて。気持ちわりぃ~」

ネオン街をすり抜ける風が自由に駆け回る。
鼻先が冷たい。
でも、詩音の手を握った指先は暖かい。
私達はこのまま、詩音の部屋へ向かう。
あの部屋には性別なんて存在しないんだ。


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