楽々荘の住人十色
母さんを亡くした時、俺は丁度、今の海波と同じ歳だった。

「俺、そんなに表に出てる?」

あの時、10歳だった海波はどう思ってたんだろうか。
甘えたい時に母を亡くして、まだ小学生だった海波だけ親戚の叔母さん宅に引き取られるはずだった。

「丸出しかな。しっかりしろよ、長男」

ヌル過ぎず、熱すぎないお湯のタイミングを見計らって火を消す。
一番茶を捨てて、温まった湯飲みに綺麗な玉露色が広がる。

15歳にして、この技術とワザ。
見習わなければ…。

「はい、出来たから運んで。動揺してこぼさないでよ」


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