楽々荘の住人十色
身体が重くダルい。
玄関は予定時刻を過ぎていたから閉め出された。

「廉、開けてよ」

ボサボサの頭に糸屑を付けて呆れた表情の廉に無性に甘えたくなった。

「何、泣きそうな顔してんだよ」

小学生の頃、剣道の試合で負けた時。
中学生の頃、受験と母さんの死が重なった時。
高校生の頃、好きなあの子にフラれた時。

必ず、廉の肩を借りてた。

「ちょっと、肩だけ貸して。泣いたりとかしないから」

その日は、談話室のソファーで廉の肩を借りて眠った。


< 58 / 80 >

この作品をシェア

pagetop