楽々荘の住人十色
出ない電話に伝言ダイヤル。

「先輩、今ドコですか?」

数分すると返ってきたメール。

早苗さんが居たのは、大学の資料室。

天井とどきそうな背の高い本棚が並ぶ資料室は夏の木陰が揺れ薄暗い。

寮から大学までの10分でも今日は一段と熱くて汗が額から流れ落ちる。

「珍しいですね、大学に来てるなんて」

振り向いた早苗さんの笑顔はドコか晴々としていた。

「借りてた資料返しきたんだ、私大学辞めるから」

予感は的中。
木陰のザワザワとした音が胸に走る。


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