楽々荘の住人十色
「ううん、なんでもない」

その言葉を口にした譲二は一瞬、視線をレンズから外した。
そんな憂いだ表情は何とも言えないほど綺麗だった。

あんなに綺麗な表情や雰囲気を切り取りたいと思ったのは初めて。

あの感覚は日当を浴び水を弾き先ほこる華。
甘い蜜と香りに誘われる。







「今回の課題で僕と牧之原さんはある人物を撮るポートレートを制作しました」

課題発表の日。
やっぱり悟は、スタジオ撮影が間に合わなかったのか、スナップ写真が殆どの写真集。


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