指先の魔法
エメラルドポートの海
その奥深くでは人魚がいると言われている
「ステラ!もう地上に行くのはよして!」
「なんで?とても素敵よ?お姉様も行ったらいいのに」
「人魚の私達は人間から見たらとても価値ある種族。何をされるかわからないわ」
人魚のステラは毎日地上に行くのが日課となっていた
周囲から注意されてもそれを無視し
地上へ行っては楽しいことを見つけ、時には人間の手助けをし、海の底でじっとしていることはあまりなかった
地上の人々はステラを可愛がった
「溺れた息子を助けてくれたのよ」
「漁の手助けをしてくれたんだ」
「海に落とした物を探してくれたわ」
「綺麗な声で歌を歌うんだ」
人魚の種族は素晴らしい声の持ち主
人魚達が揃って歌えば、荒れた海は穏やかになり
枯れた珊瑚も蘇る
「地上の人達は優しいわ。お姉様の思い過ごしよ」
ステラはこの日もまた地上へ赴いた