世界の果てに - 百年の光 -
首を傾げるあたしに、エルはため息をつく。
「多分な。外に出たくないのか、出れないのか。どっちかだ」
「出れないって…」
「―――おばあちゃん!」
その時視界に映ったのは、ある家から出てきた老人と、それを引き留めるようにしている若い女の人。
「おばあちゃん、ダメよじっとしてなきゃ!」
「…わたしは、最後に思い出の場所に行きたいんじゃ」
「最後とか言わないの!大丈夫だから!」
フラフラしている老人を、何とか家に連れ戻すと、女の人があたしたちに気づいた。
「あら…旅の人?」
「ああ」
何の躊躇いもなく、エルが頷く。
そりゃまぁ、盗賊なんて言ったらイメージ悪いだろうけど…
女の人は、困ったように笑う。
「ごめんなさいね。今、どこのお店もやってなくて…他の所に行った方がいいわ」
「…どうして?」
アスティの問いに、女の人は自分の家に視線を向けた。
「…今ね、この国には原因不明の病が流行っているの。ほとんどが感染していて、動けない状況なのよ」
私は辛うじて大丈夫なんだけど、と付け加えた女の人の表情は、とても悲しそうだった。
原因不明の病…。
だから、誰一人外に見当たらないんだ。