世界の果てに - 百年の光 -
ユランには、ほんの一年前に旅の途中で訪れていた。
その時、オレとエルは最新の医療技術の説明を受けたんだ。
「すぐに、連絡を取った方がいいよ」
そう告げると、チェディは慌ただしく部屋を出ていった。
その後ろ姿を見送ると、オレはため息をつく。
あとは、ユランの技術にかけるしかないな…
「すごいな、兄様は」
ぽつりとした小さな声が、耳に届く。
困ったように笑うデューイが、オレを見ていた。
「…すごい?何で?」
「僕なんかよりずっと、的確な判断が下せるんだもん」
デューイは視線を逸らし、窓の外に広がる景色を眺めた。
「この国は今、国王が病気という噂が広がって、不安が渦巻いてる。僕はそれを、ただ黙って見ていることしか出来ない」
オレと同じ色の瞳が、悲しげに揺れた。
「叩き込まれた教育も、何の役にもたたないなんて、参っちゃうよ。…だからね、兄様」
デューイはオレに視線を戻すと、ハッキリと言った。
「―――帰ってきて欲しいんだ。この国を、守るために」
窓の外の木々が、ざわりと揺れた。