世界の果てに - 百年の光 -
他の馬が大人しいのに対し、クリスは暴れていた。
ヒヒン、ヒヒンと鳴いては、繋がれた鎖を引きちぎろうともがいている。
「…おい、クリス!落ち着けって!」
こんなとき、ちびっこがいたら言葉が分かるのに。
舌打ちをしながら、俺は宿主と一緒にクリスを宥めた。
落ち着きを取り戻したクリスが、今度は俺をじっと見てきた。
「あん?何だよ」
「ヒヒン…」
「ヒヒンじゃ分かんねぇし」
悲しげな瞳を向けられるが、俺には馬語が分かんないんだから仕方ない。
それでも何かを訴えようと、クリスは俺を見つめている。
「何だよ、ちびっこにでも何かあったのか」
適当にそう言ったのに、途端にクリスは興奮し出した。
そういえば、アイツとクリスは繋がりがあるんだっけか。
―――ってことは。
「やらかしたな、あのバカ」
俺はため息をつくと、もう一度クリスを宥めてから馬小屋を出た。
…結局、留守番すらまともに出来ないのか。
遠くに見える城に向かって、俺は足を進めるしかなかった。