世界の果てに - 百年の光 -
あたしがこの部屋に落ちる直前の、デューイくんの表情を思い出す。
見てるこっちが苦しくなるような、悲しそうな顔。
「…やっぱり、アスティの弟だなぁ…」
アスティがこの国に戻る前に見せた表情と、そっくりだった。
誰かを想う、そんな表情。
あたしは膝を抱き寄せると、そのまま顔をうずめた。
ひんやりとした壁の感触が、背中から伝わってくる。
「お兄ちゃん…」
ポツリと呟くと、お兄ちゃんの顔が頭に浮かんだ。
「お父さん、お母さん…」
考えないようにしていた。
考えてもすぐに会えるわけじゃないし、悲しくなるだけだから。
…でも、アスティとデューイくんを見たら、思い出してしまった。
「会いたいなぁ…」
―――家族の、温もりを。
当たり前だった光景が、突然当たり前じゃなくなった。
もしこのまま帰れなかったらと思うと、ぞっとする。
だからアスティには、会えるときに、大切な人たちに会って欲しかった。
今の気持ちを、しっかり伝えて欲しくて。