世界の果てに - 百年の光 -
盗賊という職業を、俺は誇りに思っている。
自分が生きる為に、欲しいものは盗む。
自分の道を切り開くのは、他の誰でもなく、自分自身だと思える。
王族は、そんな俺とは正反対の存在だと思ってた。
自分は何もせず、他人に全てを任せ、高いところから見下していると…そう、思ってたのに。
―――アイツは間違いなく、自分の足で立っていた。
「…アスティ王子、か」
他人に興味を示したのは、ある人物を除けば、始めてかもしれない。
ただ純粋に、話してみたいと思った。
夜が更け、ひっそりとした静寂が国を包む中、俺は行動を開始した。
城の周りを囲う高い塀を越え、茂みに身を隠す。
兵士の見回りの明かりが離れていくのを見計らって、俺は城へと近付いた。
木の陰に身を潜め、堂々とそびえ立つ城を見上げる。
王子の部屋はどこか。
…それは、簡単に分かった。
見上げる先のベランダに、月明かりに照らされて、その姿があったから。
「………」
ひとつ深呼吸すると、俺は近くの大木に登り始めた。