世界の果てに - 百年の光 -
冷たい床に胡座をかいたまま、俺は苦笑する。
するとアスティは、俺の顔を覗き込むようにして言った。
「…辞めるの?盗賊」
簡単に心の内側の部分に触れられて、思わず押し黙る。
アスティの生活に、憧れを抱いたのは確かだった。
でも俺には、家族がいない。
家族と呼べるたった一人の人間は、去年この世からいなくなった。
あの時、確かに俺は、左目の傷に、盗賊として生きることを誓ったんだ…。
「―――――辞めないで、エル」
紫の瞳が、優しく細められて俺を見ていた。
その言葉は、不思議と俺の中に吸い込まれるようして入ってきた。
「盗賊をやっていたから、今のエルがあるんでしょ?」
「………」
「だったら、勿体ない。オレは、今のエルが好きだよ」
…好きだなんて、サラリと言いやがって。
気持ち悪いなんて憎まれ口、叩けないくらいに笑顔浮かべやがって。
けど、そんなアスティの言葉だから。
―――すんなりと、受け入れることが出来るんだ。