世界の果てに - 百年の光 -

今までにないくらいのスピードで、自転車を漕ぐ。


今の時間は、八時半。


試験は十時からで、最寄り駅から試験場に着くまで、一時間。



…つまり、あたしは駅まで三十分で着かなきゃいけないわけで。


や、三十分かかったらアウトだ。


「もー!考えてる暇なんかないっ!」


あたしは必死の思いで、駅までの地獄の坂を登っていた。


坂を登り切った頃、目の前に黒い小さな影が飛び出した。


「ひゃっ!?」


驚いて急ブレーキをかけると、その正体が分かった。


黒い、猫だ。


口に何かをくわえているみたいだけど、よく見えない。


「危な…っていうか、黒猫って不吉なんだけど」


嫌な考えを振り払うように頭を振って、再び自転車のペダルに足を掛けた。


―――でも。


「………!」


猫が、道路を横切り始めた。


すぐに辺りを見渡すと、車が近付いて来ているのが見える。

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